どよ則
「貴方と、寝待の月を見たいものだな」
隣で盃を傾ける道誉が呟く。
——空にはまだ月はない。
「……お前さんと待つ夜は、まだ来ないみたいだなぁ」
則宗は残った盃をあおり、ことりと盆に置いた。
道誉の視線が、則宗をたどる。
「また、な」
則宗は口元に笑みを残して、ゆるりと立ち去った。

どよ則
「貴方と、寝待の月を見たいものだな」
隣で盃を傾ける道誉が呟く。
——空にはまだ月はない。
「……お前さんと待つ夜は、まだ来ないみたいだなぁ」
則宗は残った盃をあおり、ことりと盆に置いた。
道誉の視線が、則宗をたどる。
「また、な」
則宗は口元に笑みを残して、ゆるりと立ち去った。
ちょも則
華が次々と開いていく。
光の中、則宗は目を細めていた。
「綺麗だなぁ」
急に、空間が赤く染まる。——まるで、血のように。
「則宗!」
思わず、腕を掴んだ。
「どうした? 僕の山鳥」
「いや……」
「可笑しな子だねぇ」
そのまま則宗の肩を抱く。
寄り添ううちに、色は移ろいでいった。
ちょも則
「では、行ってくる」
「気をつけて」
気合いを入れるように、山鳥毛の肩を叩いた。
だが、山鳥毛は何も言わずにこちらを見る。小首を傾げると、腕を広げてきた。
「……ああ!」
広げられた腕の中に収まり、もう一度呟く。
「必ず、帰ってこいよ」
込められた腕の力が、答えを示していた。
ちょも則
「赤、だな」
則宗の髪に真紅の簪を飾ると、鏡越しの則宗が呟いた。
「気に入らないか?」
「いいや」
則宗の表情は、今にも歌い出しそうだ。
「……似合うな」
「ふふ、おまえさんの色だからなぁ」
振り返った則宗の頬は赤く染まっている。
「ああ、私の色だ」
そっと腕の中へ抱きしめた。
則宗と南泉
「御前」
「んー?じじいに何のようだ?」
「じじいって」
「僕は、ただの則宗だからね」
南泉が言葉を失うと、則宗はからりと笑う。
「……御前は、御前だろ」
「そうだなぁ……ありがとよ」
則宗が、少し高い位置の南泉の頭を撫でる──その手付きは変わらない。
南泉はただ目を伏せた。
ちょも則
雷光が暗闇を裂く。隣に眠る山鳥毛が、ぱちりと目を開けた。
「のりむね……?」
おりた前髪で、いつもより幼く見える。
「ここにいるぞ。おやすみ」
そっとその頭を引き寄せる。
「うん……」
山鳥毛が胸の中で小さく頷いた。
遠く雷鳴が聞こえてくる。
──だが、ここだけは、静かだった。
ちょも則 嵐の前
「おお!」
少し開けた雨戸の隙間から、強い風が入り込む。
「危ないぞ」
「わかってる」
則宗は頬杖をつき、外を眺めている。先程よりも風が強まっていた。
「則宗、もう仕舞いだ」
「……つまらん」
雨戸を閉めると、則宗は不服そうに唇をとがらせる。
その仕草に、山鳥毛は笑いを零した。
ちょも則
にわか雨に降られ、廃屋に飛び込む。纏わり付く服に、則宗は舌打ちした。
「濡れたな」
山鳥毛が、ハンカチで頬を拭いてくる。
「……誰が触って良いと言った?」
「ふむ。言われてないな」
じとりと睨みつけるが、その手は止まらない。
「……まったく」
則宗は溜め息をつき、目を閉じた。
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雛ちょもと則宗
「お頭様」
小首を傾げて見上げるのは、小さき雛鳥。
「……どういうことだ?」
傍らの審神者を睨む。
彼は弾かれたように「バ、バグですッ!」と叫んだ。
「お頭様……?」
雛が、そっとズボンの裾を引く。
「大丈夫だぞ」
優しく頭を撫でる。目を細める雛に、思わず笑みが零れた。
ちょも則
ぽとりと、灰が床に落ちた。
指に挟んだ煙草からは、ただ煙だけが揺らめいている。
「はぁ……」
口から息が零れた。
まとわりつく煙は、自分とは違う香りで──肌がぞわりと粟立つ。
「……本当に、追いかけてしまうぞ」
ひとり呟いた言葉は、煙と共に消えていった。
ちょも則
「火をくれないか?」
山鳥毛が音もなく近寄ってくる。
煙草の先端を向けると、山鳥毛が先端を合わせて息を吸う。互いの煙草が赤く光った。
もう煙草は短い。最後に大きく吸って、煙を山鳥毛へ吹きかけた。
「お先に」
灰皿に押し当てた煙草が、細く煙をくゆらせていた。
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ちょも則
クツクツと鍋が沸き立つ。
束ねた髪がふわりと動くのを見て、口元が緩んだ。
「山鳥毛、味見をしてくれ」
差し出されたものを、口を開けて迎える。
「美味しい」
「ふふっ」
頬をつつく指を捉えて、唇を寄せる。
「くすぐったいぞ」
笑う則宗を、そっと腕の中へ閉じ込めた。
ちょも則
「加州の坊主は面白いなぁ」
「あんたの方だろ?」
笑い声と共に、二振りが傍らを通り過ぎる。
脇へ寄った山鳥毛の指先が、一瞬掴まれ、するりとなぞられた。
振り返っても、その背はもう遠い。
「……参ったな」
山鳥毛は顔を覆う。
辺りには、甘い菊の香りだけが漂っていた。
ちょも則
すっかり戦支度は調っている。一筋の乱れも、皺もない。だが、あえて互いの首元のネクタイに手を伸ばし、締め直す。
「今日もいい男だな」
「知っている。貴方もな」
ただ触れるだけの口付けを交わす。
「怪我するなよ」
「貴方も気をつけて」
互いに背を向け、歩き出した。