#短編小説 『黒地蔵』
今は昔、村の外れの荒屋に母子が二人で住んでいた。
その子供は、肌も目も、口の中まで真っ黒で、村人達からたいそう不気味がられて疎まれていた。
ある時、長雨がひと月ばかり続いた夜、
地鳴りと共に山津波が村に迫って来た。
余りの勢いに、逃げ場なぞ何処にも見当たらず、村人達は死を覚悟して仏に祈るばかりだった。
しかし、何時まで経っても山津波は来ない。
不思議と思い戸口から外を覗けば、荒屋の辺りが光り輝き、山津波はそこでピタリと止まっていた。
何事かと様子を伺うと、岩のように硬くなった黒い子供が光りを放っていた。
傍らには祈るような形で息を引き取った母の骸があったそうな。
