【004】
夢が散る
目を開けても夢のかすかな香りがする
懐かしい香りだった
それは辿れずに霧散して
それでもまだ夢の余韻が残っている
何故かあの子のことを思い出している
夢に出てきたのかもしれない
輪郭はおぼろげで
確証を得られずにただ思い出している
名前を呼ばれたこと
マフラーに埋もれる笑顔
様々なことを開示したこと
手を握ったこと
僕はまだ
君の幸せを祈るだけの存在になれない
絵・文:茅野カヤ
【使用インク】NEKO NO TE INK

【004】
夢が散る
目を開けても夢のかすかな香りがする
懐かしい香りだった
それは辿れずに霧散して
それでもまだ夢の余韻が残っている
何故かあの子のことを思い出している
夢に出てきたのかもしれない
輪郭はおぼろげで
確証を得られずにただ思い出している
名前を呼ばれたこと
マフラーに埋もれる笑顔
様々なことを開示したこと
手を握ったこと
僕はまだ
君の幸せを祈るだけの存在になれない
絵・文:茅野カヤ
【使用インク】NEKO NO TE INK
【003】
夢の中で
真っ白な雪の中を歩いていた
雪は重く、背に汗が伝った
僕は雪しかない場所にいる
何処だろうとは思わなかった
此処は僕の中だ
足下に鮮血が落ちて
自分が怪我をしていることに気づいた
振り返ると点々と赤く散った跡
そうか、傷ついているんだ、と知った
手当てをしようと思った
そう思えるようになったのが新鮮だった
目覚めて手のひらを眺める
血の影もない
でも僕は傷ついている
もう大丈夫だと思う
絵・文:茅野カヤ
【使用インク】SAILOR Ice Dance
【002】
夏の草いきれは影も形もなく
大嫌いなはずの夏にも寂しさが残る
緑生い茂る庭にしゃがみ込み
しばらく草の匂いを探していた
金木犀はもう散ってしまったかも
秋の匂いが立ち込める
雑草に触れ、そのざらざらとした表面を撫でる
僕はきっとこの雑草より弱い
ただ悪意さえあれば根絶やしにできる
その悪意が現れないことを祈りながら
少し湿った葉に触れている
絵・文:茅野カヤ
【使用インク】Dominant Industry Olive Grove
【001】
青空が広がる
秋晴れだねって笑う先には
日向ぼっこをしている猫がいる
夜には星が綺麗に瞬くだろう
少しだけこれから来る冬に思い馳せる
いつかの冬とセットになったそれは
星より街明かりより眩しい
誰かの笑顔と重なった
絵・文:茅野カヤ
【使用インク】Dominant Industry Starry Night
明日から一日一兎(いちにちいっと)6年目開始です。お付き合いいただけましたら幸いです。
#うさぎ #インクドローイング #一日一兎
【365】
手を伸ばしても届かない星星に願いを
月日は巡るのだと
この歳になってようやく分かる
あのとき黄色いラインを越えていたら
あのとき落ちた階段で頭を打っていたら
あのとき窓枠を越えていたら
きっと届かないことも分からず
小さな欠片を手にすることもなかった
生きていれば、なんて言わない
ただこの世は何が起こるか分からない
良いことも悪いことも確かに起こり
時間が良くも悪くも薄れさせる
月は空高く
今は隠れた陽は
地球の反対側で煌々と照る
絵・文:茅野カヤ
【364】
月から滲み出た夜が空に広がってゆく
星が瞬き始め
僕の視界は光でいっぱいになる
寂しさは遠くなる
このひとときだけは意識の外に追いやる
美しいものだけが失念させてくれる
瞬きをしたら寂しさがまたたく
もう死にたいほどの寂しさはない
時間は進む
僕自身は進まなくてもいい
ただ在るだけでいい
絵・文:茅野カヤ
【363】
夜が明ける前にふと目覚める
時折あるこの目覚めに
名前がついていることを知ったのはいつだったか
夢は覚えておらず
ただ気分の良いものではなかったことだけが
喉元に淀んでいる
近頃は収縮も肥大もしなくなった
僕の身体は重く
ただ存在を確かめている
夢とうつつの分離だけが
世界を不確かにしている
絵・文:茅野カヤ
【362】
太陽が夜に染み込んで
視界が滲む
四角い夜が訪れる前に帰らないといけない
何処に?
いつだって還る場所がないことに驚く
死んだあとも何処にも行けないだろうと思う
途方に暮れるのを
好きなものを詰め込んだこころが否定する
嘘をついている気がする
それでも今このときを大切にしたい
矛盾したこころはやはり
何処にも行けないだろうと思う
絵・文:茅野カヤ
【361】
時計の針がひとつ進むごとに
僕のいのちの残数は減っていく
決して回復しないHP
MPをチョコレートと
ジャスミン茶で回復させて
またひとつ絵を描いた
鬱病で無駄にした残数を
今になって使い直している
それでもまだ足りないと思う
焦らないでってひとに言うのに
焦燥感が強い
引いた線は消えない
僕の生きた線も残ってほしい
絵・文:茅野カヤ
【360】
満月がいびつに歪んで見える
足元はふらつき
自身が酔っていることを思い出した
眼鏡をかけていないから
月も二重に見えるはず、と思い
不思議だった
今、僕が見ているのは月ではないのだろうか
酔いが不思議と冷めない
ずっと夢のような心地で
その大きな月のようなものを見ていた
どこまで歩いても月は正面にあるので
僕はついにおかしくなったのだな、と
少し安堵した
絵・文:茅野カヤ
【359】
夜を
沈む月を
喰らいつくしてゆく朝を
僕は憎む
包まった毛布をいっそう強く握る
泣いていた夜の庭で
月光がただただ美しかったのを思い出す
月明かりが見えない今の部屋が
青く染まるとき
絶望を繰り返していたとき
泣けなかったのを思い出した
絵・文:茅野カヤ
【358】
夢を見るときの
波が打ち寄せる音
灯台に光がともる音に耳を澄ます
波音にかき消された足音が近づいてくる
静かに夢が始まるのを
スクリーンで見ている僕
波音が遠くなる
かすかに潮の匂いがした気がした
絵・文:茅野カヤ
【357】
夜を疾走る
目指すは遠い惑星の
君に逢いにゆく
試練は日々日々やってくる
ひとつひとつ射抜いてゆく
墓標が立ち並ぶ軌跡を
ただひた疾走る
君はもう待っていないかもしれない
それでも僕は僕の意思に従って疾走る
自分勝手を許してと思う
涙は墓標に落ちて
点々と光っている
絵・文:茅野カヤ
【お題】十二星座・射手座
【356】
窓硝子にぼんやり映った影が
自身のものだと気づくのに少し時間がかかる
僕のほうが影みたいだったから
みんな僕に気づかないの
いつも声をかけると驚かれる
それがずっと悲しかった
だけど今は影でもいいかなって思う
猫みたいに気配を消して
忍者みたいに隠れ蓑を使って
魔法使いみたいに姿を消して
みんなを驚かせるの
ハロウィンが近づいているからね
絵・文:茅野カヤ
【355】
新しい月
高くなる空
まだ眩しい陽光
目が覚めてカーテンを開ける
久しぶりの晴れ間に
懐かしい気持ちになる
早く冬が来ればいい
星が瞬くの
月が笑うから
僕は寂しいのだと気づくの
絵・文:茅野カヤ
【354】
世界の端で独り
独り言を言っても誰にも聞かれない
聞かれない言葉は無いものとなるのか
無いものが僕の中で積もってゆく
積もってゆく心は足元の砂漠の砂のよう
砂漠の砂が風に舞って目に入る
目に入った砂を涙とまばたきで出すの
涙は砂漠の心に染み込んでゆく
絵・文:茅野カヤ
【353】
君の苛烈さを知っている
でも僕も結構苛烈なところがあるんだよ
君は燃えさかる火に手を入れる
僕はそこから君を引っ張り出したかった
今はもう燃えてはいない?
もう知りようがないけれど
君の苛烈さは僕の光でもあったって
知っていてほしかったな
絵・文:茅野カヤ
【352】
空に伸びた手足は
いくつもの弧を描いて軌跡を残す
少しくらい毒があったほうがかわいいでしょ?
今は毒ばかりの世の中だから
毒をもって毒を制す
かわいいだけじゃつまらないでしょ?
正しいだけじゃ生きられないなんて
正しくない奴が言うなよ
絵・文:茅野カヤ
【お題】十二星座・蠍座
【351】
見上げることが苦しくなって
いつの間にか月を見なくなった
下を向けば影は濃く微動だにしない
いつだって空を見上げていたいけれど
強い陽光にうつむいてしまう
冬になったら空高くなる
星もきっと綺麗に見えるだろう
それまでは陰を歩き身を縮める
それでもいい
うつむいていてもいいよ
綺麗な月の欠片を見つけられるかもしれない
絵・文:茅野カヤ