2026/10/20
#140字小説

2026/10/20
#140字小説
#140字小説 マンションが建つ前はここは野原だった。幽霊がでるって有名だった。でも害はないんだ。野原に咲く季節ごとの花を見てるだけで。奥さん、あんたのベランダに出るっていう女の子の霊は、多分それだと思う。あんたのガーデニングが今のあの子の野原なんだ。花を見せ続けてやってくれないか。
使い魔は人の姿に化けていました。魔女様への贈り物を街で買い求めるためです。使い魔は魔女様を慕っており、それはまるで恋心のようなものでしたが使い魔にそのような自覚はありません。異国の花を扱う店で大きな花束を作ってもらい、幸せそうに微笑みます。喜んでもらえるだろうかと帰路を急ぎます。
2026/10/19
#140字小説
雨を待っている。空が泣くのを待っている。強がってばかりのあなたが心を緩められるのを待っている。そう考えながら、今日もいつもと変わらない一日を過ごす。天気は晴れ。色づいた銀杏の葉がきれいだとあなたは笑った。映画に行こうと提案した。泣ける映画は嫌、とあなたは言う。冷めていくコーヒー。
2026/10/18
#140字小説
#140字小説 太陽がのぼり魔女が魔法をかけると、明るい街並みが現れ市場が並び人々が集い少女たちが笑顔で通りを行き交い音楽が鳴り焼きたてのパンの匂いがし魔女はカフェで珈琲を飲みます。0時の鐘が鳴ると魔法は解け、人々も音楽も街並みも何もかも消えて、荒野と、魔女の小さな小屋だけが残ります。
お砂糖とスパイスと素敵なものいっぱい。可愛い女の子になるはずだったそれらから生まれたのは、なんか、本だった。あれえ、と思いながら本を開く。そこには知らない世界が広がっていて、私は慌てて本を閉じる。いけない、面白くてどっぷり浸ってしまいそう。少しずつの摂取じゃないと身を持ち崩すぞ。
2026/10/17
#140字小説
「いしやーきいもー」と流れる音声と共に焼き芋を売りにくる人がいる。「今年は売り始めが少し早いね」一つもらいながら話しかける。今年は涼しくなるのが早かったからだと説明される。そう言われるとそんな気もする。近くで遊んでた子供らも興味津々だったので、皆でお分けと買ってあげた。#140字小説
#140字小説 「『無』、『無』はいらんかねー」『無』の屋台があった。道行く人々に「『無』はどうだい?」と声をかけては断られている。金額によっては買おうかなと思いつつ前を通ると、屋台の男は僕を見て言った。「アンタ、いい『無』持ってるね! 良かったら買い取るよ!」そうか、もう持ってたか。
#140字小説 呪いをかけられた。夜になると妻は猫になる。昼になると彼女は人間に戻るが僕の方が猫になる。そしてこの呪いを解くべく旅に出た僕たちは、ようやく呪いの元を断ち、二人で話し合って選んだ……二匹となって、尻尾を絡め合いながら、新たな住処と定めた美しく平和な森へ向かった。
お願いしますお願いします。そう願ったからか、私はもう一度その一日を繰り返すことになった。二度目の朝食を食べ、二度目の通勤、二度目の退勤、二度目の待ち合わせ。そして来ないあなたに電話をかける。初めて知った事実は残酷で、私はまた願うことになる。お願いしますお願いします。三度目の朝食。
パスタを茹でている時にスマホに着信があった。もう少しで茹で上がるのにと思いながら応答すると警察を名乗る女性だった。⚪︎⚪︎さんですね? 今お時間大丈夫ですかと聞いて来た。今忙しいのでまたにしてくれませんか? と伝えた途端電話を切られた。ツーツー。やれやれ何だったんだろう。#140字小説