2026/09/24
#140字小説

2026/09/24
#140字小説
心のパーツを分解してメンテナンスをする。ひとつひとつ取り外して並べていく。この一番大きいのは感情を受け止めるところ。ひとまずの感情はすべて入ってくるからすっかり汚れている。磨き、グリスアップをする。他のパーツも汚れていた。どれもきれいに磨く。終わったら組み立てて元通りにはめ込む。
そろそろ模様替えの時期だ。くっきりした青に、水をたっぷりふくませたハケを、上から下へすーいすい。雲を巻き込んでいくと、みるみるうちに青が薄くなる。ついでにもっと下の方、山の稜線、水平線まで。すべての線が薄くなって、じわじわぼやける。くしゅん。小さな音がよく聞こえた。
2026/09/23
#140字小説
古い曲を流しながらうとうとする。ぽやぽやと夢のはじまり、浮かんでは消える昔の思い出。ああ、あのときこうしていれば。ああ、このときこうしていれば。後悔だったのだろうけれど、夢の中ではそれと認識できず、ただ少し、悲しい気持ちになる。そこから続いた私の今。かくんと体が揺れ、目が覚めた。
仕事の帰りに最寄り駅までの地下鉄に乗った。いつも5分位で着くのに電車はいつまでも走り続けている。地上に出たみたいでビルの灯りが窓に映っている。どこを走っているんだろうか? 電車に乗っている他の乗客は何も不審に思っていないようだ。アナウンスが流れる。「次は⚪︎場、⚪︎場」#140字小説
2026/09/22
#140字小説
#140字小説 老人は薔薇園の世話をする。丁寧に丁寧に。薔薇がお好きなんですね。問われて首を横に振る。薔薇を育てて増やすのはトゲがあるから。ほらあの陰を見てごらん。子供が隠れんぼしている。トゲだらけの枝の中なら誰も苛めに来ないから。寂しいまま死んだ子供の霊を、薔薇が美しく包む。
※再掲です
喉が、乾いた。歩き続けてここまで来た。いまさら戻れないし目的地はまだ遠い。水が尽きてしまったのだ。ふらふらしながら砂漠を行く。どこかで水を汲めるといいのだけれど、当然オアシスなんてそんな簡単には現れない。喉が渇いた。目が霞む。けれど行くしかないのだ。日陰もなく、でも行くしかない。
2026/09/21
#140字小説
#140字小説 やめとけと何度も忠告したのに、友人が貯金をつぎ込んで探偵事務所を開設してしまった。「うまくいくわけないだろ」「そうでもないよ。この日を目指してずっと頑張ってきた」友人は得意気な顔で受付席に座る。「君と会った十歳のときから、君を名探偵にするのが僕の夢だったんだから」
※再掲です
「親愛なる君へ。
私は人類が数百年かけても果たせなかったことを成し遂げた。今や人間は妖怪の顔色を窺わず、自らの意志で生きられる。
それでも私は幸せではない。だから君の世界の稗田阿求だけは、どうか幸せにしてほしい。小説で、動画で、同人誌で」
画用紙にペンを滑らせる。線は輪郭となり、そこに犬が生まれた。犬は画用紙の上を駆け、こちらを見つめる。よし、取り出してやろう。ハサミを入れる。輪郭に添って。生まれた紙の犬は吠えようとする。それはいけない。私はひっそりと生きているのだ。犬をなだめ、おやつをあげる。犬はしっぽを振った。
2026/09/20
#140字小説
#140字小説 「そんなに愛していたなら、なぜその人を仲間にしなかったんだ?」友である吸血鬼に訊くと、彼は答えた。「人と吸血鬼では寿命が違いすぎる」「それが理由?」「寿命が違うと生きる速度も感情の速度も違う。愛してると気づいたのは、その人が寿命を全うして百年ほどたった頃だったよ」
※再掲です
夜のお茶会をしました。お茶会です。これは麦のお茶です。泡立ってますけどお茶です。ちょっと苦いだけです。よく冷えていて美味しかったです。甘いお菓子じゃなくてしょっぱいお茶請けばかりでしたがお茶会です。お茶請けですから。会が進むとふわふわと心地良くなりましたが楽しかったからですよぉ。
2026/09/19
#140字小説