審神者とちょも則
朝からどこか気怠そうだった則宗を探して、本丸を歩いていた。
「あ……」
ふと中庭の向こう、開け放たれた障子の奥に、眠る則宗の姿。
その頭を撫でる刺青の入った手だけが見えた。
審神者の口から吐息が漏れた。そのまま踵を返す。
大きく伸びをして、ゆっくりと歩き出した。

審神者とちょも則
朝からどこか気怠そうだった則宗を探して、本丸を歩いていた。
「あ……」
ふと中庭の向こう、開け放たれた障子の奥に、眠る則宗の姿。
その頭を撫でる刺青の入った手だけが見えた。
審神者の口から吐息が漏れた。そのまま踵を返す。
大きく伸びをして、ゆっくりと歩き出した。
ちょも則
読んでいた本が、ふいに下から持ち上がった。
「……邪魔するぞ」
本の下から覗き込んできた則宗が、山鳥毛の脚の間へ入り込む。そのまま山鳥毛の胸元に頭を預けた。
もたれ掛かる則宗の髪が、頬をくすぐる。
「少し、寝る」
目を閉じた則宗に口付けを落として、山鳥毛はページをめくった。
南泉と則宗
南泉は座り込んだ。不意を突かれて負った傷がじくじく痛む。
「チッ……全然、駄目だにゃ」
「南泉一文字」
頭上から声が振ってくる。
「僕が選んだ山鳥毛が、お前を選んだ……あとはわかるな?」
見上げた先には、扇子に隠れた口元。だが瞳はまっすぐと南泉を見ていた。
「……うっす!」
お頭則宗
抱きかかえていた体が、ずしりと重みを増す。
足を止めると、すうすうと寝息が聞こえてきた。
「やれやれ……本当に雛だなぁ」
この雛もいずれは、抱えきれないほど大きい鳥となる。
「お前は、どんな刀になるんだろうなぁ」
そう呟いた言葉に、答えはない。
もう一度抱えなおして、歩き出した。
雛ちょも
茂みの中から引き出されて、目に入ったのは黄金だった。
「お、お頭様っ!」
声が、思いの外大きく響く。
「元気な雛だなぁ」
笑う則宗に、そのまま抱え上げられる。
ぐらついて、思わずしがみついた。
「あっ」
離れようとすると、背をぽんと撫でられた。
温かさに、そっと頬を寄せた。
ちょも則
指で、汗ばんだ則宗の背骨をなぞっていく。
「こら、邪魔をするな」
びくりと震えても、返事は素っ気ない。
「服が着れないだろうが……」
「つい、触りたくなるんだ」
伸びる指から、身を捩って逃げる。背は隠れてしまった。
「……残念」
「また、な」
小さい口づけの音だけが、残った。
則→ちょも
「……気に食わん」
意味もなく、机をトントンと叩く。視線は一点から逸らせなかった。
上杉刀と笑い合う山鳥毛——ここからでもわかるほど、屈託ない笑み。
「……楽しそうで、何よりじゃないか」
そう口にしてみたが、どうにも面白くない。
則宗は重々しく息をついて、視線を逸らした。
姫鶴と則宗
則宗がふわと口を開いた。息と共に間の抜けた声がもれる。
「なに、寝不足なの?」
「んー……少しな」
則宗は目を擦りながら答えた。その瞼はほとんど開いてない。
「じゃあ、今夜、いい夢をさーびすしてあげる。……なんちて」
「……ありがとよ、姫鶴」
則宗は小さく笑った。
則宗と日光
「……暑い」
天を仰ぐと、雲一つない青空が広がっていた。
「御前、手を動かして下さい」
息をついて、鈴なりになった茄子を一つ手に取る。
ぷちと音をたててもいだ。
「……冷たい物を用意してます」
背中越しの声が耳に届く。
「さっさと終わらせるぞ!」
則宗は次の実に手を伸ばした。
ちょも則 帰還
玄関先は、出迎えの者達で溢れていた。
「……いた」
人だかりの中、目当ての姿を見つける。一瞬だけ視線が交わるが、すぐに逸らされてしまう。
遠ざかる則宗の背を見つめて、ひとつ息を吐いた。
──少しでも、話がしたいのに。
喉までせり上がった声は、飲み込んだ。
ちょも則 出迎え
帰還した男士の中に、目当ての相手を見つける。
白い衣装は土埃で汚れてはいるものの、血などはついていない。
ふと小さく息をついた。
「……え?」
──ふいに、山鳥毛と目が合った気がした。慌てて逸らして、そのまま踵を返す。
喧噪が遠のくほど、自分の鼓動がやけに耳についた。
ちょも則
則宗が、山鳥毛を寝台へ引き倒した。
そのまま山鳥毛の上に跨ってくる。
「楽しそうだな、則宗」
「うはは! いつも、見上げてばかりだからなぁ」
則宗の指が、気まぐれに山鳥毛の肌をなぞっていく。
「今日は、僕を見上げるといい」
則宗は艶やかに笑ってみせた。
則宗と長義
「わっかんねー!」
書類を読んでいた審神者が叫ぶ。
「役所書類だからな」
則宗が苦笑すると、審神者は「監査官~!」と叫んで天を仰いだ。
「元、だよ」
長義が溜め息をつく。
「長義もだ!」
「……随分と余裕があるようだね?」
冷ややかな言葉に、審神者は渋々書類をめくった。
ちょも則+南泉
「お頭、主が……って何してるにゃ?」
振り返った山鳥毛は耳かきを手に、目を伏せた則宗を膝枕していた。
「則宗、起きてくれ」
「んー……」
則宗が起きあがると、山鳥毛はその頬を優しくひと撫でして、立ち上がった。
「子猫、行くぞ」
「あ、ああ」
南泉は慌ててその背を追った。
加州と則宗
「ねぇ、ネイルさせてよ」
爪を深紅色に染めていた加州が、声を掛けてきた。
「いいぞ。で、何色を塗ってくれる?」
「何色でも、アンタはアンタでしょ?」
手を差し出しながら目を細めた則宗に、加州はあっけらかんと答える。
我が本丸の初期刀は末恐ろしい。
則宗は、声をたてて笑った。
日光と則宗
「……お頭は無茶ばかりします」
溜め息交じりの日光の言葉に、則宗はわずかに目を見開いた。
「日光」
則宗はちょいと手招く。
素直に近寄ってきた日光の頭を、遠慮なくわしわしと撫でた。
「おまえさんがいるからこそ、無茶ができるのさ」
日光はただ黙って、則宗の手に身を任せた。
どよ→則
「ご隠居、髪に葉がついていますよ」
「……ん?取ってくれるか」
差し出された黄金の髪から葉を摘み——そのまま、毛先へ口づけた。ほんの一瞬だけの触れ合い。
「とれたか?」
「……ええ」
摘まんだ葉を見せれば、則宗は礼を言って去っていった。
道誉はその背を見送り、ひとつ息を吐いた。
ちょも則 ④執務室で
執務室の扉を開けると、室内では山鳥毛と則宗が向き合っていた。
「今度、二人で過ごさないか?」
小指どころか、山鳥毛は則宗の手を握っている。
則宗がおずおず頷くと、山鳥毛が則宗を引き寄せる。
──そこで、審神者は扉を閉ざした。
「自室でしてぇ……」
言葉は虚空へ消えていった。
ちょも則 ③小指の続き
演練が終わり、審神者は息を吐いた。
「よく頑張ったな」
山鳥毛を労う則宗の小指は、また山鳥毛の小指と絡んでいる。
「……仲いいね」
首を傾げる二振りに、審神者は黙って手元を指す。その指先を追った二振りは、同時にぱっと離した。
「……嘘でしょ」
審神者は頭を抱えて、天を仰いだ。
ちょも則 ②のろけ
「山鳥毛が討ち取ったぞ」
則宗の弾んだ声に、審神者も頷く。
「うん、強いね」
「ああ。本当に……僕の跡目は、いい男になったものだ」
今まで聞いた事のない声音に、審神者は思わず隣の則宗を見た。
「どうした?」
当の則宗はきょとんとしている。
気づけば、我が本丸は勝利を収めていた。