「あ、月」と呟く君が惹かれてく遠い世界を隠してよ雲 / マエリベリー・ハーン

夕焼けに緑があると君が言い私の空は七色になる
二重螺旋 我と言葉のひと鎖宇宙全てを書き換えてゆけ
タイプライターを等しく打ちつける無限のシェイクスピアのコピー
ロリポップ歯で噛み砕く稲妻に怯えた子犬は秋の始まり
誰もかも寂しがってる私だけのものになってよ秋って嫌い
秋の夜の短歌を乗せたタンカーはやがてあなたの部屋に突っ込む
百億年先に秋の月はなく君も宇宙も塵へと還る
三万年先に秋の月を見て君は母星へ帰ると決めた
三時間前に秋の月を見て君は素足でひとり踊った
三十年前に秋の月を見て君は手紙を丸めて投げた
二百年前に秋の月を見て君は長屋で子猫を抱いた
七百年前に秋の月を見て君は日記の書く手を止めた
二千年前に秋の月を見て君は駆け出し小菊を踏んだ
一万年前に秋の月を見て君は焚き火と共に眠った
隠してたアイスを柔らかくしてく息をひそめてあらしのよるに
パッケージに「500W 2:30」と書いてるパスタを深夜に食べる
海岸で拾った夏の貝殻は袋を開ければ抜け殻だった
鳴り響く頭の中の音楽が途絶えるときがわれの黄昏