🌊【見難い火傷の子686】
「水が戻っている」
炊き出し場の排水口から、泥水が逆流した。
患者を移し、宿舎を空け、古い水路を調べる。
やがて見つかったのは、浮いた石と――支給品ではない足跡。
そして患者が呟いた。
「……あけた……」
偶然ではない。
誰かが、何かを開けたのか?
水の流れの先にあるものは――。
▼第686話「戻る水」
ncode.syosetu.com/n8656lm/686/
#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子

🌊【見難い火傷の子686】
「水が戻っている」
炊き出し場の排水口から、泥水が逆流した。
患者を移し、宿舎を空け、古い水路を調べる。
やがて見つかったのは、浮いた石と――支給品ではない足跡。
そして患者が呟いた。
「……あけた……」
偶然ではない。
誰かが、何かを開けたのか?
水の流れの先にあるものは――。
▼第686話「戻る水」
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
床下にいたもの。
黒い筋。
淡い帯状の何か。
患者の寝台を叩く音。
そして、古い排水路。
調べるほど、水の流れと患者の異常が繋がっていく。
夕方、排水口から泥水が戻り始めた。
「こっちへ来てる!」
水が、逆流している。
『見難い火傷の子』685
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
水脈を追う。
井戸、古い水場、切通し、病舎――
地下の水の流れが、次々と繋がっていく。
岩の割れ目には、水に逆らって動く黒い筋。
そして、こちらを見ていた人影。
「……きた……」
床下から、何かが擦れる音がした。
『見難い火傷の子』684
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
683 分ける者たち
患者を分ける。
布を分ける。
水を分ける。
家族を分ける。
そして、工区も止める。
「分からんことを、分かったように書くな」
その一方で、患者は床を流れる水を追っていた。
何が繋がっているのか――まだ分からない。
#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
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見難い火傷の子682
第七切通しで起きた「異常」は、死体だけのものではなかった。
病舎で相次ぐ発熱。
「水」を求める患者。
「下へ」と繰り返すうわごと。
そして――背中で蠢く、何か。
第七切通しで確認された「歩く死体」と、病人たち。
一見、別々に見えた異変が、一本の線でつながり始める。
「水を止めてください。今すぐ」
間に合うのか。
第682話「異変の共通性」
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
※挿絵はAI生成です(CAD・手描きを除く)
見難い火傷の子681
第七切通しで発生した異常事案。
発熱者、行方不明になった遺体、そして――
水抜き溝で発見された「立つ遺体」。
背中から現れた黒色の異常体は、死体を宿主として動かしているのか。
事態はついに、現場処理の範囲を超えた。
「境界案件として正式認定されたし」
張良、上申。
第681話「第七切通し異常事案・上申書」
#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
※挿絵はAI生成です(CAD・手描きを除く)
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見難い火傷の子680「見つかった遺体」
消えた遺体は、水抜き溝で見つかった。
泥の中に立つ、その姿。
だが――それは「立っている」のではなかった。
背中が動く。
衣の内側で、何かが蠢いている。
「下がれ。あれは死体じゃない。運ばれてきた器だ」
雨の山裾で発見されたのは、遺体ではなく――
遺体を使って動く、未知の何かだった。
▼第680話「見つかった遺体」
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
※挿絵はAI生成です(CAD・手描きを除く)
見難い火傷の子679「消える遺体」
工事現場で相次ぐ発熱者。
そして、安置していた遺体が消えた。
やがて届いた報告は――
「消えた遺体が、立っていた」
事故なのか、病なのか。
それとも、この世界特有の「境界案件」なのか。
雨の山裾で、正体不明の異変が動き始める。
▼第679話「消える遺体」
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
※挿絵はAI生成です(CAD・手描きを除く)
「それは私たちの所管ではありません」
医療、福祉、就労、住居、身元、商業、治安。
一つ一つなら担当部署がある。
だが、複数にまたがった瞬間、誰も全体を引き受けられなくなる。
未解決案件の増加が生み出したのは、単なる職能団体ではなかった。
「どこにも引き取られない案件」を受け止めるためのギルドだった。
『見難い火傷の子』676
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
「ここにいた方が、本人のためになる」
負傷したドワーフ工匠は、脱皮室由来の休養施設で回復していった。
だから退所しなくなった。
誰も閉じ込めようとはしていない。
むしろ善意だった。
しかし「保護」は、いつしか「住み分け」へ変わり得る。
快適で安全な場所ほど、そこから出る理由を失わせることもある。
『見難い火傷の子』675
12. ドワーフ住み着き事件
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
「守るための技術」が、
「管理するための技術」にもなり得る。
ラミアの脱皮室から広がった
湿潤、遮光、隔離、静穏、非強制。
それは弱った者を守るための条件だった。
だが同じ環境が、
異種族の隔離、
脆弱者の収容、
見世物の演出、
そして行動の制御にも利用できる。
守ることと隔てること。
休ませることと拘束すること。
形は同じでも、倫理は逆向きになり得る。
問題は技術そのものだけではない。
「誰のために」「誰が決めるのか」。
『見難い火傷の子』674
11. 転用と逸脱
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
技術が一般化するとき、
最初の用途のまま広がるとは限らない。
ラミアの若殻保護油は保湿・美容へ。
脱皮技術は美容脱皮へ。
脱皮室は、人間の休養施設へ。
名前も意味も薄れていく。
それでも残ったのは、
湿潤、遮光、隔離、静穏、非強制。
複製されたのは「形」ではなく、
弱った者を守るための「条件」だった。
技術が広がるとは、
技術そのものだけでなく、
その技術が前提としていた「守り方」が社会に根づくことでもある。
『見難い火傷の子』673
10. 技術の一般化
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
「治す前に、休ませる場所」
ラミアのために生まれた「脱皮室」という言葉は、
都では美容の流行語になっていた。
けれど、沢の子が訪れた店にあったのは、
美しくするためではなく、疲れた者を守るための部屋。
乾いた者へ湿りを。
強ばった者へ温みを。
見られ疲れた者へ、視線を遮る布を。
「弱っていても、いてよい部屋」
言葉は磨り減るだけではない。
別の誰かを守る形へ、広がることもある。
『見難い火傷の子』672
幕間 守る部屋
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
「剥がせることと、剥がしてよいことは違う」
美容脱皮の流行で増える無資格施術と重大事故。
薬師、治癒師、領主、ラミアの長老。
それぞれの立場がぶつかる中、脱皮師が求めたのは独占ではなく――「境」。
どこまで触れてよいのか。
いつ専門家へ引き継ぐのか。
そして、施術を受ける者の尊厳をどう守るのか。
やがて「脱皮師」は国家資格となる。
『見難い火傷の子』671
幕間 国家資格・脱皮師
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
「剥がしたのではありません。守ってもらったのです」
美貌を取り戻そうとして傷ついた伯爵夫人。
彼女を救ったのは、ラミアの若き脱皮師だった。
美しさを売る技術ではない。
傷つけないための技術。
かつて「沢の子」と呼ばれたラミアの歩みが、
やがて脱皮師の資格制度へとつながっていく。
『見難い火傷の子』670
幕間 沢の子
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#創作 #ハイファンタジー #Web小説 #見難い火傷の子
人間用の「普通」が、すべての種族に適しているとは限らない。
沢見村の小さな接触事案から、
湿度・遮蔽・光量・静穏環境を備えた「保護住区」という発想が生まれる。
『見難い火傷の子』666
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「襲撃か、防御か」
沢で起きた出来事を、村長宅で整理する。
同じ出来事でも、言葉ひとつで意味は変わる。
「柔らかくすると嘘になる」
幼いラミアとの接触を、怪談にも英雄譚にもせず、
事実としてギルドへ伝える。
そして判明するのは――
怪物との遭遇ではなく、生活圏の重なりだった。
『見難い火傷の子665』
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脱皮を終えた幼いラミアが、立ち上がる。
痛みに耐えながら、一歩。
また一歩。
誰も追わない。
誰も「待て」とも「行け」とも言わない。
ただ、帰るための道だけがそこにあった。
「帰った、か」
「帰れたんだよ」
『見難い火傷の子664』
ncode.syosetu.com/n8656lm/664/
見難い火傷の子663
ラミアは、突然現れた怪物ではなかった。
昔から谷の奥に棲み、沢見村とは互いに距離を置いて暮らしていた。
今回現れたのは、脱皮中の幼いラミア。
敵か味方かではなく、そこに暮らす「隣人」だった。
『見難い火傷の子663』
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「囲むな。輪をひらけ。道を残せ」
怪物と恐れられたラミアの少女。
薬師のトウ婆が見つけたのは、彼女自身が集めた痛み止めと保湿の薬草だった。
討つべき怪物ではない。
痛みに備える術を知った、ひとりの子どもだった。