「フフフッ。魔界の魔法探偵の手腕。とくと拝見させてもらうわ。」
*
翌日の深夜。栄のビルの屋上から、ネオンに彩られたナゴヤの街を見下ろす二つの影があった。風にマントをなびかせる魔法探偵アークライト2世と、その傍らで静かに佇む暗黒老剣士スミス。
「さて。ベッピンはどんな手を使ってくるかな?」
「我々は連中にマークされてしまいました・・・が、その裏をかき、一網打尽にしてくれましょう。」
怪しく光るナゴヤの夜が深く、静かに更けていく・・・
【完】

「フフフッ。魔界の魔法探偵の手腕。とくと拝見させてもらうわ。」
*
翌日の深夜。栄のビルの屋上から、ネオンに彩られたナゴヤの街を見下ろす二つの影があった。風にマントをなびかせる魔法探偵アークライト2世と、その傍らで静かに佇む暗黒老剣士スミス。
「さて。ベッピンはどんな手を使ってくるかな?」
「我々は連中にマークされてしまいました・・・が、その裏をかき、一網打尽にしてくれましょう。」
怪しく光るナゴヤの夜が深く、静かに更けていく・・・
【完】
光が美味しそうにトーストを頬張る。咲はコーヒーを一口すすると、向かいに座るアークライト2世を見た。
「あんたたち!口ばっかりだと思ったけど、なかなかやるじゃない。」
「フッ。褒め言葉として受け取っておこう。我々は魔界随一のトラブルシューターだからね。」
キザに笑うアークライト2世に、咲はニヤリと笑いかけた。
「じゃあさ。この街のためにベッピンを壊滅してもらおうかしら。ナゴヤの闇、引き受ける気ある?」
「無論。このナゴヤの闇、我々が引き受けよう。」
アークライト2世が帽子を軽く持ち上げてウインクする。咲と光は顔を見合わせ、声を合わせて笑った。
彼女は懐から煙玉を取り出すと、地面に叩きつけた。白い煙が晴れたときには、襲撃部隊と共にその姿は消え去っていた。
「ま、向こうは向こうで、必死ってわけね。」
咲は不敵に微笑んだ。
*
数時間後。レトロ喫茶「琥珀」。マスターの金城が淹れたコーヒーと、山盛りの小倉トーストを前に、四人はテーブルを囲んでいた。デラモドドラゴンが、アークライト2世の足元で嬉しそうに尻尾を振っている。
「いやぁ、一時はどうなるかと思ったが・・・店が無事でよかったよ。」
「金城さんの小倉トーストが食べられなくなるなんて、ナゴヤの終わりですからねぇ。」
放たれた超電磁レールガンは、美雨の持つ結界兵器のコアをピンポイントで射抜いた。
ドガアァーーーーーーンッ!!!
兵器は大爆発を起こし、眩い光が路地裏を包み込む。
光の爆風が収まったとき・・・そこには、衣服が少し破れてススだらけになった美雨が、へたり込んでいた。
「くっ・・・今回は、私の負けです。」
美雨は悔しげに唇を噛みながらも、フッと不敵な笑みを浮かべた。
「ですが、秘密情報部隊ベッピンは諦めません。いずれ必ず、このナゴヤを奪還してみせます!」
「私の魔法からは逃れられないよ!」
アークライト2世の杖から放たれたド派手な魔法が、美雨の法術を相殺し、その視界を奪う。
「光!」
「任せてくださいっ!」
光が目にも留まらぬ速さで美雨の背後に回り込む。美雨は一瞬の隙を突かれ、身動きが取れなかった。
「しまっ・・・!?」
「これで最後!買い出しのお釣り、受け取りなさい!!」
咲が、この日一番のサイキックを十円硬貨に込める。
バチバチバチッ!!
大須商店街の街灯が一瞬、全て消えるほどの電力が彼女の右腕に集約された。
シュウゥーーーーーンッ!!
「フッ。魔界からの名探偵としても見過ごせないな。」
「光、行くよ!」
「はい!一気に片付けましょう!」
三つ巴の睨み合いから、一転して新旧コンビの共闘へと突入する。
「愚かな・・・救国の一撃を受け、滅びなさい!」
美雨が兵器を起動し、凄まじい霊力の波動が周囲の空間を歪め始める。
だが、四人のコンビネーションは一瞬でそれを凌駕した。
「我が暗黒の刃よ、光を喰らえ!」
スミスの黒剣が放つ闇の斬撃が、美雨の展開した防御結界に亀裂を入れる。
凛とした、しかし冷徹な声が路地裏に響き渡った。現れたのは狩衣を身にまとった美人陰陽師・安倍美雨。彼女の手には、熱田神宮での実験で完成させた、霊力と法術の結晶である不気味な形をした救国の結界兵器が握られていた。
「これ以上、魔界の住人どもにこの街を汚させるわけにはいきません。この兵器で、ナゴヤの闇を魔王軍もろとも一網打尽に消し去ります!」
「はあ!?そんな物騒な兵器で大須の街が消えたら、喫茶『琥珀』の小倉トーストはどうなるのよ!?」
咲が本気で怒りを露わにする。アークライト2世もまた、不敵に笑って杖を構えた。
光の鋭い剣閃がひらめく。衣装こそスカートの男の娘だが、その剣技は本物。襲撃部隊は気絶して、その場に転がっていく。
「フゥー。ちょっと咲さん、自販機を壊したら弁償ですよ!?」
「いいのよ、緊急避難だから!それよりアンタたち!」
咲は、呆然と立ち尽くしていたアークライト2世とスミスに詰め寄った。
「このナゴヤで、勝手なことするんじゃないわよ!」
「な、なんだ、君たちは?」
魔界の凄腕探偵であるアークライト2世も、ナゴヤの超能力探偵の理不尽な勢いには気圧されるしかない。
「おしゃべりはそこまでです、皆さん!」
咲が叫ぶと同時に、懐から取り出した十円硬貨を右手指に乗せる。パチパチと青白い電磁火花が彼女の腕を駆け巡り、次の瞬間、凄まじい轟音とともに閃光が放たれた・・・超電磁レールガン。
放たれた十円玉は音速を超え、ベッピンの部隊を・・・ではなく、その真横にあった自動販売機を直撃した。衝撃で自販機が爆発し、中から大量の缶コーヒーや炭酸飲料が降り注ぐ。
「ギャアァーーッ!炭酸が目にっ・・・」
「な、なんだこの攻撃は!?」
不意を突かれ、襲撃部隊の包囲網がガタガタに崩れる。そこへ、光が可憐なステップで踏み込んだ。
「これでもくらえぇ!神速の連撃!!」
「誰だ!?ナゴヤの探偵か。だが、我々の行く手には・・・」
キザに帽子に手を当てたアークライト2世が振り返った瞬間、大須のアーケードの天井から、戦闘服に身を包んだ集団が音もなく舞い降りた。
胸元に刻まれているのは、不退転の覚悟を示す六文銭の紋章。秘密情報部隊ベッピンの襲撃部隊だ。
「チッ!待ち伏せか。スミス、やるぞ!」
「御意。我が暗黒剣の錆にしてくれよう!」
スミスが禍々しい黒剣を抜こうとした、その時だった。
「そこをどきなさーーーいッ!」
【第10話】秘密情報部隊ベッピンとの死闘!
魔王軍の占領下であるナゴヤ、大須商店街。その路地裏を、二つの影が疾走していた。
「待ちなさいっての!そこの魔法使い!」
怒声を上げるのは、アラサーの超能力探偵・銭形咲。そして、その隣を制服のスカートをなびかせて走るは、乙女塾高校2号生の男の娘剣士・月野光だ。
二人が追っているのは、レトロ喫茶「琥珀」の裏口から脱出したばかりの魔法探偵アークライト2世と、その相棒である暗黒老剣士スミスである。
【第9話のあらすじ】
大須の喫茶「琥珀」に現れたのは、魔界で有名な魔法探偵アークライト2世と暗黒老剣士スミス。彼らの目的は、ナゴヤ奪還を目論む秘密情報部隊ベッピンの動向を探ることだった。
しかし、彼らはすでにベッピンの密偵にマークされていた!?マスター・金城の機転で追手をかわした二人だが、事態を知った超能力探偵・咲と男の娘剣士・光が黙っていない!
「私たちのナゴヤで勝手にシリアスやられるのは迷惑だ」と、探偵×探偵×秘密組織の三つ巴の戦いが幕を開ける!
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「ベッピンねぇ・・・あの女、ナゴヤを奪還するとか何とか大層なこと言ってたっけ。けどさ、私たちのナゴヤで、東三河に逃げた連中が勝手にシリアスやられても困るわよね?」
咲は不敵に、そして楽しげに唇を釣り上げた。
「お仕事(裏稼業)の時間だよ、光ちゃん。その魔界の坊ちゃん探偵とベッピンが派手にやり合う前に、私たちの力を見せつけてやりましょう!」
「はい、咲さん!お供します!」
日常ののんびりとした空気が、一瞬にして裏社会の熱を帯びる。ナゴヤを舞台にした、探偵と探偵、そして秘密組織の三つ巴の戦いが、今まさに幕を開けようとしていた。
「さっき、珍しい客が来てな。魔界から来た、アークライトとかいう有名な魔法探偵の坊ちゃんだ。」
咲はコーヒーをすする手を止め、片眉を上げた。
「魔法探偵ぇ?何それ、私の同業者?」
「奴らの目的は、例の『ベッピン』だ。さっき、この店を出ていったばかりだ。」
金城の言葉に、光が表情を引き締める。
「熱田神宮の美人陰陽師たちの仲間ですかね?魔界の探偵さん、危ないんじゃ・・・」
咲はフゥーと息を吐くと、ポケットから使い古された十円硬貨を取り出し、親指の上でパチンと弾いた。コインは鋭い金属音を立てて回転し、咲の手の甲にピタリと収まる。
「もー、お腹ペコペコ!マスター、いつものイタリアンスパゲッティ、卵敷きでちょうだい!」
アラサーの超能力探偵・銭形咲が、カウンターの丸椅子にドサリと座る。その後ろから制服姿の可憐な男の娘剣士・月野光が、苦笑しながら続いた。
「咲さん、お行儀が悪いですよ。マスター、こんにちは。デラモドちゃんも。」
「キュ~。」
デラモドは光の足元に擦り寄って甘え始めた。金城は咲の前にコーヒーを差し出した。
「咲さん。光ちゃん。」
「んっ?なに、マスター。神妙な顔しちゃって。」