ミクと雨の都
「もう少しだけ、遠回りしていこうよ?」
和傘を傾けたミクが、こちらへ手を差し伸べる。
幾重にも重なる瓦屋根、その向こうにそびえる青い摩天楼。
雨ににじむ窓明かりをたどれば、まだ知らない景色に出会えそうだった。
傘を打つ雨音に、ふたりの足音が重なってゆく。
今夜は、雨がやむのを待たなくてもいい。

もしもの都
もし、日本の美意識が途切れることなく現代まで進んでいたなら・・・。
和の面影を残した高層都市、その夜空を悠然と泳ぐホログラムの金魚。
人々にとっては日常で、それでも我々にはどこか夢のような景色。
ミクはただ、現実と幻想の境界を泳ぐその光へ、そっと手を伸ばした。