@ucosaka.bsky.socialOct 20, 2026, 11:00 PM 子どもが通う小学校の隣に、大きな施設ができる。説明を聞いたとき、場所も用途も決まっていたら、どう感じるだろう。北九州市のデータセンター誘致から見えてくる、私たちと行政の関係。決まる前から声を届け、まちの未来に思いを反映できる。その関わり方を、一緒に考えたい。なぜ、決まってからしか知らされないのだろう――データセンター誘致から、まちの決め方を考える①#まちづくり#住民参加#地方自治#データセンターucosaka.comなぜ、決まってからしか知らされないのだろうデータセンター誘致から、まちの決め方を考える① いつも通る道の先に、工事の看板が立った。そこに何ができるのかを知り、少し気になって説明を聞いてみる。ところが、場所も用途もすでに決まっていて、工事も始まっている。 もし、それが自分の家の近くや、子どもが通う学校の隣だったら、どう感じるだろう。 建物ができれば、風景も、人や車の流れも変わる。その場所で続いていくくらしについて、私たちの思いは、いつ、どこで受け止められるのだろうか。 北九州市のひびきの地区で進むデータセンターの建設計画は、そんな問いを私たちに投げかけている。 小学校の隣の土地は誰が選んだのか 計画地は、北九州市立ひびきの小学校の隣にある。市が公表した1棟目の計画は、地上4階、建物が立つ地盤からの高さ約42メートル、延べ床面積約3万2,000平方メートル。さらに2棟目も計画されている。 データセンターは、多数のコンピューターを動かし、情報を処理・保存する施設だ。冷却設備や非常用の電源設備も必要になる。学校や住宅の近くに建てるなら、騒音や排熱、工事車両などの影響を、そこで過ごす人たちが確かめたいと思うのは当然だろう。 この土地は、もともと市有地だった。 市の説明資料によると、2021年に市が事業者へ複数の候補地を提示し、土地が選ばれた。2023年には売買契約が市議会で全会一致で可決され、10月に売却が完了した。同じ月に、自治会組長会で説明したことも記されている。 事業者にとっての立地条件が検討され、土地の売却へと進んだ。その過程に、学校で学ぶ子どもたちや周辺で生活する人たちの視点は、どのように取り入れられていたのか。 公表された経過からは、売却前に周辺住民や保護者が計画を知り、立地の是非も含めて考え、意見を反映できる機会があったのかは判らない。市は、まずそこを説明する必要がある。 「説明した」と「一緒に考えた」の隙間 その後、市は2025年にも自治会組長会で説明し、出前講演も行っている。2026年1月には造成工事の住民説明会が開かれ、2月に造成着工。7月と8月には建物計画の住民説明会が行われた。 そして10月9日、市主催の住民説明会が開かれた。 説明の機会はあった。しかし、住民が知りたかったこと、意見を伝えたかったことに、その説明は応えるものだったのだろうか。 この場所に建ててよいのか。規模は適切なのか。ほかの場所を選ぶことはできないのか。こうした住民の意見を、土地を売る前の判断に反映できたかどうかが重要である。 10月9日の市の説明資料には、次の一文がある。 土地は売却済みであり、市は事業者に対して工事中止の権限はありません。 出典:北九州市・2026年10月9日住民説明会資料、3ページ 市が誘致し、売却した土地について、今度は売却済みであることを理由に、中止する権限はないと説明する。住民は、その前提から話し合いに加わることになる。 市が土地を持ち、売るかどうか、どんな条件を付けるかを判断できたときに、市民の意見を受け止める機会を設けたのか。決定後に説明会を重ねても、その問いは残る。 まちの将来を左右する選択を済ませてから、住民には影響への対策だけを話し合ってもらう。その進め方は、住民の判断を政策決定の外に置く、非民主的なものである。 市有地は市民の財産だ。その使い方を決める過程に、市民が関われる機会を保障する責任が行政にはある。議会で議決したことだけで、その責任を果たしたことにはならない。 私たちのまちでも、同じことは起きていないか 10月15日、市長は住民・事業者・市による協議会を設けると発表した。想定する議題は、生活環境、通学路や教育環境への配慮、安全対策、情報共有などである。 必要な話し合いではある。しかし、立地や規模そのものを見直す提案まで扱えるのかは、発表からは明確ではない。対話の場をつくるなら、住民の意見によって何を変えられるのかも示す必要があるだろう。 この事案を、北九州だけの出来事として読み終えてしまってよいだろうか。 大阪市でも、もと北天満小学校の跡地にデータセンターを整備する事業者が選ばれている。土地は定期借地による貸付であり、北九州とは条件が違う。それでも、公共の土地をどう使うのかという判断に、住民がいつ、どの範囲で関われたのかは、同じように確かめたい。 学校の跡地、公園、公共施設。自分たちのまちにある場所の将来が決まるとき、私たちはどこから話し合いに加われるのか。 決まったことを受け入れてもらうために説明会を開き、異議を述べても「すでに決まっている」と返すのなら、住民の声を聴くという言葉は空しくなる。結果として、反対意見が判断に届く道も閉ざされる。そのような行政の進め方を、いつまでも当たり前として受け入れるわけにはいかない。 もし、まだ選べる段階で情報が届いていたら、どうだっただろう。子どもの通学や地域での生活から気づくことを伝え、立地や規模を考え直すこともできたかもしれない。行政が見落としていた問題を、市民が見つけることもあるはずだ。 私たちは、まちを決める過程に、自分たちの経験や思いを持ち寄れる。その機会があることは、行政を信頼して任せるための、身近で大切な条件ではないだろうか。 そして、誘致を進める行政が語る「経済成長」や「地域への還元」は、そこでくらす人に何をもたらすのか。次回は、その事例なども確かめながら、私たちのまちに残る価値を考えてみたい。 参考資料 北九州市「ひびきのデータセンター情報ステーション」建設計画の概要、周辺への影響、市の対応など。 北九州市「ひびきの地区の安全安心なデータセンターに向けて」(2026年10月9日・住民説明会資料)誘致・土地売却・説明の経過、住民・事業者・市の関係など。 北九州市長定例記者会見(2026年10月15日)住民・事業者・市による協議会の設置方針と、想定する協議事項。 大阪市北区「もと北天満小学校活用に係る開発事業者の決定」データセンター事業の提案内容と土地の貸付条件。 ※公表資料の確認は2026年10月20日現在。 続く ucoの活動をサポートしてください